こんにちは。きのひです。
「雨柳堂夢咄(うりゅうどうゆめばなし) 其ノ十二」 波津彬子 著 を読みました。
2008年1月30日 第1刷発行
「きれい・・・」
「登水子(とみこ)さん、また眺(なが)めているの?」
登水子が縁側で見ていたのは器に入れられた金魚でした。
「そろそろ中に入れなさい。猫が来て取ってしまうわよ」
「わかっています。光の下の方がきれいなの」
「真佐彦(まさひこ)従兄(にい)様も婚約者(いいなづけ)への贈り物が金魚だなんて気がきかないわ」
真佐彦は登水子の従兄(いとこ)です。
真佐彦の両親は流行病(はやりやまい)で亡くなってしまった。
「妹夫婦はかわいそうなことになった。真佐彦はうちがひきとって後見(こうけん)してやろう」
「わしは登水子の婿(むこ)にどうかとも思っている」
「それはいいかもしれませんわね。まだ先の話ですけど」
登水子は物陰でそれを聞いていたのでした。
それから年月が経ち、真佐彦には別の婚約者が。
「この金魚、今度寿々子さんに渡すまで置いといてくれますか」
「大人っていいかげんだわ。言うことが違ってくるのだもの」
うかない顔の登水子でした。
そんな登水子が一瞬目を離したすきに「パシャ・・」という音が。
登水子が見たのは走り去る黒猫の背中でした。
「あっ、金魚・・・」器の金魚がいなくなってる。
「だめっ、だめよ。その金魚はだめっ」
登水子は足袋のまま縁側からとびおりて黒猫を追いかけ始めました。
走りながら金魚を持ってきたときの真佐彦の言葉が思い出されてきます。
「ほら尻尾(しっぽ)がちょっと違うし、きれいな更紗(さらさ)だろう」
「品種改良していてまだ完全じゃないそうだけど、きれいだったんで無理を言って特別に譲(ゆず)ってもらったんだ」
金魚、かわいいですよね。
「 TOKYO AQUA GARDEN 」2023.09.05 「金魚の歴史!起源から品種改良と輸入・輸出などについてをご紹介!」
「金魚の起源は、約2000年前に中国の長江下流で偶然見つかった、赤いフナとされています」
この赤いフナを元に繁殖、選別が繰り返された結果、970年代には観賞魚としての金魚のベースが出来上がった。
この時代の金魚は数が少なく非常に高価だったため主に皇族や貴族の間でのみ楽しまれる贅沢品でした。
「その後時間をかけて徐々に品種改良が進められていきましたが、1966年から始まった文化大革命の折に、中国で養殖されていた金魚は処分され一度断絶しています」
「中国で金魚の養殖が復活したのは文化大革命後、日本に渡っていた金魚を親魚として再生産が始まり、現在に至るのです」
「てならい堂 ohanashi ―おはなし―」 2020/08/15 「江戸の金魚ブーム、きっかけは武士のサイドビジネス?!」
「金魚は偶然生まれた姿を人間が世に留めた、自然界には存在しない魚」
尾びれの改良などが進んで徐々に華やかな姿へと進化すると、金運をもたらす魚として「金魚」と名付けられます。
「人が創り得る唯一の『生きた芸術』と言われている。
日本に初めて金魚がやって来たのは、室町末期の大阪でした。
当時は高級品で、一部の貴族の間でひそやかに話題になる。
江戸中期になると、藩士が副業として金魚養殖を始めます。
この流れに火が付き、大量生産されるようになると、いよいよ金魚の価格がダウン。
またたく間に庶民に広まり、江戸に金魚ブームが到来したのです。
当時はガラスがなく、陶器に入れて上から見るのが主流のスタイルだった。
「実はこの『上見(うわみ)』こそが金魚の正しい鑑賞法」
尾びれが水の推進力を得てどうしたら花開くように見えるか。
「金魚の最大の見どころは『尾びれの揺れの美しさ』なのです」