こんにちは。きのひです。
「なぞとき」時代小説傑作選 細谷 正充 編 を読みました。
2018年1月23日 第1版第1刷
「捕物」をテーマに6作品が収録されています。
「煙(けむ)に巻く」梶よう子著 には煙草屋がでてきます。
男前の兄弟が店先でそろって乾燥させた煙草の葉を刻んでいく。
兄弟二人の息はぴたりと合い包丁さばきの正確さも互角。
二人の手にかかると煙草の葉は絹糸ほどの細さになります。
「すげえな。絹糸、それ以上だな」
「でも、刻みの技だけで煙草の味ははかれません。植えられた地によって味が変わるんです」
兄弟によると葉たばこにはいろいろな銘柄があるけど種類が違うわけではない。
育った土地によって味わいが変わるんですね。
お茶の葉もそうなんでしょうか。
煎茶堂東京さんの2020年2月14日ブログで「やぶきた」について書かれてました。
「静岡茶」「宇治茶」「八女茶」これらはどれも品種ではなく産地の名前を付けたお茶の銘柄です。
日本で栽培されている茶の75%は同じ品種。
それが「やぶきた」と呼ばれるものです。
「やぶきた」の生みの親は杉山彦三郎(1857年~1941年)という静岡県の人物。
杉山さんは所有地の竹やぶを開拓して茶畑を造成しその中から優良な2本の木を選びます。
1本は北側にあったので「やぶきた」もう1本は南側にあったので「やぶみなみ」と命名。
その2本の実験と観察を続け「やぶきた」がとても優秀な茶の木であると気づきました。
「やぶきた」ってどんな難しい由来かと思いきやけっこうそのままでした・・。
開拓前の「竹やぶ」の名前をちゃんと残したところに杉山さんの優しさを感じます。
「やぶきた」は寒さに強くて育てやすくふやしやすい品種でした。
根付きがよくて成長が速く様々な土壌に対応できる適応性の高さがある。
それだけではなく香りもよくきれいな緑色が出やすかったんです。
味は甘みと渋みのバランスが良く香りとコクが味わえる。
なんともすごい、素晴らしい木ですね!
杉山さんは偶然この木を見つけたわけではありません。
「やぶきた」発見以前から茶の改良に励みその生涯の大部分を茶の栽培と品種改良に費やしました。
でも「やぶきた」が高い評価を受けたのは彼の死後。
1945年に静岡県の奨励品種に指定、1953年には農林水産省の登録品種になりました。
きっと杉山さんは「やぶきた」の素晴らしさを充分わかっておられたでしょう。
それにしても、指定を受けたのが生前ではなかったのがなんとも切ない気がします。
現在でも杉山さんが見つけた「やぶきた」の母木は静岡県にあるそうです。
「杉山彦三郎記念茶畑」で静岡県の天然記念物に指定され大きく茂っているとか。
お茶の木ってあまり大きくならないイメージでしたが違うんですね。
一度見てみたいです。