こんにちは。きのひです。
「雨柳堂夢咄(うりゅうどうゆめばなし) 其ノ十一」 波津彬子 著 を読みました。
2007年10月1日 新版第1刷発行
「その白い花の香は雨の日には、水滴を伝わりなお強くなるようで、一度気になると寝つかれぬくらいだ」
草介(そうすけ)は庭の同じ木の所で幽霊を見た。これで二度目です。
草介は骨董屋である雨柳堂の蓮に相談してみることにした。
「それは梔子(くちなし)の花ですね」
「この季節に咲く香りの強い白い花といえばそうだと思います」
「洋装の女性?いつも同じ所ですか?」
「はい。でも恨みがあるようには見えないんだ。幽霊ってもっと怖いかと思ってた」
「すぐ見えなくなるんだけど」
「それはやはり梔子の木に関係しているかもしれませんね」
「花に問うてみるのがいいんじゃないですか?」
「花に?」
「相手は『口無し』ですから答えてくれるかどうかわかりませんけど」
「『クチナシ』の名はその実が熟しても自分から口を開かないというところから来ているんです」
「たとえば碁盤(ごばん)の足はクチナシの実をかたどっています。『助言無用』の意味でね」
碁盤の足にそんな意味があったなんて。
「おかげさまで創業220年 京都大石天狗堂」2020年09月16日「『碁盤・将棋盤』盤の脚の話。高さと形について」
「実は、伝統工芸品としての盤の脚の高さには決まりがあります」
・碁盤の脚の高さ:四寸(約12㎝)
・将棋盤の脚の高さ:三寸二分(約9.7㎝)
「盤の脚の形にも、意味が隠されている。あの形はクチナシの実を模したものだといわれています」
その名前の通り「勝負に一切の口出しなし」という意味を含ませている。
「こんな逸話があります」
昔々、将棋の対局で、片方の勝利がほぼ決まったかのように思えました。
観戦している人の誰もが決着がついたと思ったその時
「ん?この手で逆転できるぞ!」と観客の1人が言いました。
誰も気づいていなかったその手で、形勢逆転、勝負がひっくり返ってしまったのです。
勝った気でいた対戦者は激怒し、その観客を切り落としたとのこと。
「ちなみに、本来クチナシの実は六角ですが、縁起の良い『八』にちなんで八角にされました」
そこはさらっと変えちゃうんですね・・。