紙の王とは

こんにちは。きのひです。

 

「恋し撫子」 篠 綾子 著 を読みました。

2016年1月18日 第一刷発行

 

 

 

 

 

おいちは露寒軒(ろかんけん)のところで歌札の清書をしています。

露寒軒の歌占はよくあたると評判だが本人の文字は悪筆で読みにくい。

 

 

 

 

 

 


美しい文字のおいちは歌札の清書だけでなく「代筆屋」を始めてみることにしました。

依頼を多くの人にしてもらうようにするにはどうすればよいのか。

 

 

 

 

 

 


出入りの紙屋である美雪は紙にこだわってみることをすすめます。

「新しい薄様(うすよう)の見本帖ができたのでお持ちしました」

 

 

 

 

 

 


見本帖には紅、紫、青、緑、山吹色・・種々の色がとりどりにそろっていた。

さらにそれぞれの色が濃いのから薄いのまであり、見ているだけでため息がでてきます。

 

おいちは目を輝かせました。

 

 

 

 

 

 

 

 

その横で露寒軒は「紙の中の紙、紙の王ともいうべき紙を注文したい」と言い出した。

美雪は考え込むようにしながら少し間を置きました。

 

 

 

 

 

 

 

「古い伝統を持つものであれば美濃紙、杉原紙(すぎはらがみ)でございましょうが」

「父から聞いたことがございます。伊勢松坂の旦那さまが『紙の王』だと言っていた紙のことを」

 

 

 

 

 

 

 

「それは越前(えちぜん)の鳥の子紙です」

「鳥の子紙自体は昔からあるものですしほかに産地もありますがやはり越前に及ぶものではありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

紙の種類ってサイズしか気にしたことなかったかも。

あとはコピー用紙か画用紙とか・・

 

 

 

 

 

 

 


「越前鳥の子紙」ちゃんと今でもありました。

文化遺産オンラインさんによると「えちぜんとりのこし」と読みます。

 

 

 

 

 

 

 

 


福井県越前市に伝承されている手漉きの雁皮紙の製作技術。

重要無形文化財でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

雁皮紙はジンチョウゲ科の雁皮を原料とする紙で奈良時代から漉かれてきました。

特色はかすかに黄味を帯びた色合い、滑らかで光沢のある紙肌。虫害に強く耐久性に富む。

 

 

 

 

 

 

「鳥の子」の名称は紙の色が卵殻の色に似ていることに由来するらしい。

越前鳥の子紙は雁皮の白皮(しろかわ)が原料です。

 

 

 

 

 

 

 


トロロアオイの根やノリウツギの樹皮を「ねり」として流し漉きの技法で漉きます。

銀杏の干し板等に貼って天日または室で乾燥させて製作する。

 

 

 

 

 

 

 

 


書いてはいたけど「雁皮紙」の読み方すらわかりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 


「雁皮(がんぴ)」は「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」とならぶ和紙の三大原料の木です。

幹ではなく皮の部分の繊維を利用することが特徴。

 

 

 

 

 

 

 


洋紙で使われている木材パルプは樹皮ではなく樹木の「幹」を砕いた繊維です。

 

 

 

 

 

 


全国手すき和紙連合会さんによると「雁皮紙は光沢があり緻密で粘りがあり優雅さが紙肌に表れます」

虫害にかからない特色をかわれて永久的な保存の望ましい書冊の作成に愛用されました。

 

 

 

 

 

 

雁皮の木は生育が遅く栽培が難しいので産地に野生しているものを採取するしかなく生産量は多くない。

「近年フィリピンのサラゴが多く使われています」

 

 

 

 

 

 


越前和紙の鳥の子紙は嘉暦年間(1326~28)の文献に初出している。

「和漢三才図会」には「肌滑らかにして書き易く、性堅、耐久、紙王と謂うべきものか」と称賛されています。

 

 

 

 

 


筆で文字を書くとき紙の質はより一層気になるものだったんでしょうね。