中途半端なゆきなに

こんにちは。きのひです。

 

トリガール!」 中村航 著 を読みました。

 

平成26年6月25日 初版発行

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆきなは機械やら何やらに興味はなかったのに工業大学、しかも機械工学科に入学してしまいました。

 

「これから、どうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

勉強は得意じゃなかったけれど、まんべんなくやってきました。

 

単なる結果として国語よりも数学のほうが点が取れ、社会よりも理科のほうが成績が良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

高校の先生には「お前はおっさん脳を持ってるな」と言われました。

 

あまり深く考えることなく理系に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

何となく興味のあった建築学科を手当たり次第に受験し、全滅しました。

 

その後一年浪人して、唯一受かったのがこの工業大学の機械工学科だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

授業のガイダンスを受けたけど、機械製図法にも加工工学概論にも材料力学演習にも塑性(そせい)加工学にも蒸気工学にも流体力学演習にも機械振動学にもまるで興味を持てません。

 

右も左も男子ばかりの機械工学科で女子は二人きり。

 

 

 

 

 

「わたしと和美は、いきなり盟友、という感じになった」

 

 

 

 

 

 

 

 

和美の家は小さな町工場を経営しているらしい。

 

「機械工学科に入ったのは、工場を継ぐかもしれないってのもあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆきなは和美のことをうらやましく感じていました。

 

「わたしにも和美みたいな『理由』があればなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

考えてみたら今までだって、何かに強く興味を持って、そのために主体的に行動したようなことは・・なかったのかもしれない・・

 

そんなゆきなは和美に引っ張られるようにして見学に行った人力飛行機サークルにそのまま入部することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

サークルの名前は「 T, S, L, (チーム・スカイハイ・ラリアット)」

 

夏の琵琶湖(びわこ)で行われる「鳥人間コンテスト」に参加します。

 

 

 

 

 

 

 


今年の新機体は「アルバトロス(アホウドリ)」

 

細長い翼の巨大カモメ、という感じの機体です。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『鳥と飛行機の異種交配』という言い方が一番正確かもしれない」

 

この人力飛行機が琵琶湖の空を飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

経験のない一回生はテストフライトでいろんな角度からビデオを撮ったり、タイムや距離を測ったりします。

 

「わたしと和美は右横側からビデオを撮ることになった」

 

 

 

 

 

 

 

 

機体は軽量化したいけど、剛性も高めなきゃならない。

 

「簡単にいうと壊れそうだけどぎりぎり壊れないってあたりを狙うらしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

例えばコックピットを包むフェアリングは頑丈に作らなければならないけど、飛び終えて着水するときにはきっちり壊れなきゃなりません。

 

そうでないとパイロットが脱出できないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

和美はプロペラ班で最近はずっとガレージで風の計測ばかりしているらしい。

 

「くたくただけどね、でも楽しいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

みんな凄いな、とゆきなは思いました。

 

「わたしは中途半端だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

好きになるきっかけがあって、それを握りしめようと手を伸ばし、でも諦(あきら)めるきっかけのほうを別の手が握りしめてしまう。

 

わたしの本当にしたいことって何なんだろう・・・わたしもいつか、自分の情熱を握りしめることができるんだろうか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたし、自分のしたいことがわからないんだ」

 

「和美がうらやましいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

和美は驚いた顔でゆきなを見ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、でもわたしだってプロペラ作るのを心から楽しんでるわけじゃないよ」

 

「そうなの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、楽しいって言えば楽しいけど・・・データ取ってばっかりだし・・・」

 

「眠たいときも面倒くさいときもあるし、気分が乗らないときもあるし、んー」

 

 

 

 

 

 

 

 

和美は首を捻(ひね)りながら、言葉を探しています。

 

「でも、やりたいことなんて最初はないんじゃないかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうのって後からわかると思うの。きっかけなんて縁だし」

 

「楽しそうって思ったら、好奇心に乗っかってやってみるだけだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・好奇心・・・か」

 

「でもそれで、楽しいことや嬉(うれ)しいことがあったり、感動したり感激したりしたら、今までの自分はこのときのためにあったんだな、って思うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和美さん。

 

なんだかおぼえておきたい言葉だな。