こんにちは。きのひです。
「ないたカラス」 中島要 著 を読みました。
2014年4月20日 初版1刷発行
半畳亭半句(はんじょうていはんく)は駆け出しの噺家(はなしか)です。
師匠の娘であるおちえに惚(ほ)れている。
ところがおちえは筋金入りの男嫌い。
「おちえちゃんが男嫌いになったのは、うちの師匠のせいなんです」
半句の師匠である半畳亭一句(いっく)は売れっ子の噺家で、酒と女遊びがひどかった。
挙句(あげく)、女房と娘を顧みないまま二年前に亡くなりました。
半句は喪の装いが痛々しい十六の娘にころっと参った。
母子二人の面倒を見て地道に娘の気を惹(ひ)きました。
「師匠が死んだあと、おかみさんはすっかり弱っちまいましてね」
「おちえちゃんがあたしと所帯を持つ気になったのも、おかみさんの勧めがあったからです」
浮気を繰り返す父と耐えしのぶ母を間近に見て育ち、おちえは筋金入りの男嫌い、芸人嫌いになっていた。
それでも、半句の口説きと母の言葉に押されてその気になった矢先、今度は母親が亡くなってしまいました。
母親の四十九日も無事にすんだ。
「おちえちゃん、あたしゃ生涯おめぇを大事にする」
「浮気なんざしんでもしねぇ。何なら起請文を書いたっていい」
「だから一緒になってくれ」
二人の新居は「生まれ育った長屋を出たくない」という娘の意を汲み、半句が越してくることになりました。
ところがそれから一年もたたないうちに「あたしは見たんです」
半句が芸者と抱き合っていた。
「所帯を持って一年足らずで亭主に裏切られるなんて・・」
おちえはおかねばあさんのところに家出した。
近所に住むおかねばあさんは腰を痛めて畑仕事を代わりにしてくれる人を探しているところでした。
おかねはおちえに「どうしてそんな亭主と一緒になった」と根掘り葉掘り聞いた。
「あたしと一緒になれなきゃ死んだほうがましだと手をついて頼むから、一緒になってやったんです」
「それなのに浮気をするなんてあんまりだ」
おちえは怒っておかねばあさんにぶちまけました。
すると「そういう心持ちじゃ亭主が浮気をするのも無理はない」と言われた。
どれほど懇願されたところで、心底相手を嫌っていたら夫婦になったりしないはずです。
「少しは好いたらしいと思えばこそ、一緒になったはずだろう」
それなのに「頼まれて一緒になってやった」と大きな顔をしていれば、亭主の気持ちが離れていくのも当然だ。
「浮気をされたのが悔しいなら、あんたが惚れているってことだ」
別れてもすぐに後悔するからやめたほうがいい。
「でも、約束を破られたことが許せないなら、さっさと別れちまいな」
「肝心なのは亭主じゃない」
「あんたの気持ちなんだよ」
その言葉を聞いて、おちえははっとしました。
芸者を抱きしめている半句を見たとき、胸が苦しくなったのは亭主に惚れているからだと。
「おちえ、あたしが悪かったよぉ。これからは心を入れ替えて死んでも浮気はしないから、早く帰ってきておくれぇ」
おちえは半句の元へ帰りました。
「おれの心は熊野のカラス」
「カカァ、カカァと今日も鳴く」
都都逸(どどいつ)だそうです。