こんにちは。きのひです。
「江戸の茶碗」 中島要 著 を読みました。
「艱難辛苦(かんなんしんく)が人を成長させるなら、乳母日傘(おんばひがさ)の箱入り息子はできが悪いに決まっている」
おまけに苦労を知らないことを苦労知らずは認めない。
誰もわかってくれないと、かえって嘆(なげ)く始末です。
芝口(しばぐち)一丁目の薬種問屋(やくしゅどんや)、山城屋栄太郎(やましろやえいたろう)はそういう坊ちゃんの典型だった。
父である先代が亡くなると夜ごと吉原(なか)に繰り出して飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。
今日は三日ぶりのご帰宅です。
いい加減腹に据(す)えかねた番頭に腕を掴(つか)まれて奥の蔵へと連れて行かれた。
「旦那様、これを見てもまだわかりませんか」
言われて渋々周囲を見れば、本来薬で埋まっているべき棚のあちこちが空いています。
栄太郎の使った金はこの一年で千両をはるかに超えていた。
そのせいで山城屋は今度の盆の支払いも危うい状態になっていました。
「手だてがまったくないわけじゃございません」
潰れかけた山城屋をすくうために番頭が提案したのは日本橋本町(にほんばしほんちょう)二丁目の廻船問屋(かいせんどんや)、近江屋(おうみや)との縁組でした。
「とんでもない。近江屋の娘といったら、三十路(みそじ)の行かず後家(ごけ)じゃないか」
「わがまま三昧でもらい手のない厄介者(やっかいもの)を、どうして二十二のあたしが嫁にしなくちゃならないんだい」
「では、どうやって金を工面(くめん)するおつもりです」
「このままでは噂(うわさ)通り盆の払いが滞って、山城屋は潰れます。旦那様はそれでもいいとおっしゃいますか」
なんとかならないかと店にある帳面を片(かた)っ端(ぱし)からめくり始めた栄太郎はおかしなものに気が付きました。
「この、赤目勘兵衛(あかめかんべえ)様に月一両ってのはなんだい」
今から十七年前、五歳の栄太郎がかどわかされそうになったとき、その場を通りかかった浪人のおかげで危(あや)うく難を免(まぬが)れた。
それに深く感謝した栄太郎の亡き母親が身代の続く限り月一両を支払うと約束したといいます。
その浪人である勘兵衛はどうも仇(かたき)と追われる身の上で、芝神明(しばしんめい)一帯を取り仕切る香具師(やし)の元締めとも親しいらしい。
「香具師ってなんなのさ」
香具師ってどんな仕事なんでしょうか。
「 Oggi.jp 」「『香具師』とは?読み方や漢字の由来、香具師の口上などについてわかりやすく解説 2025.02.19」
「『香具師』とは祭りや縁日などに店を出し、商売をする人のことです」
一般的に露天商の意味。
漢字と読み方の由来は諸説あるようです。
「かつて『弥四郎』という名前の者が初めて薬を売り歩いたという説」
「やし」という読み方は薬を売り歩いていた「薬師(やくし)」の「ク」の音が省略されたともいわれています。
「かつての『香具師』は薬や香具、匂袋などを売るスタイルが主流だった」
「香具師」の仕事には「ガマの油売り」や「バナナの叩き売り」のように古くから受け継がれるものがある。
「現在は縁日に多くの露店が並び『香具師』は私たちにとって身近な存在といえます」
ちなみに「こうぐし」と読むこともありますが、この場合は「香具屋(こうぐや)」という意味が含まれる。
香具屋とは、白檀(びゃくだん)や沈香(じんこう)などの植物を材料に、香りを楽しむ香具を作ったり売ったりする人のことです。
同じ漢字で読み方も意味も違うなんて。
ちょっとした混乱があったかもしれませんね。