こんにちは。きのひです。
「烏(からす)に単(ひとえ)は似合わない」 阿部智里 著 を読みました。
2012年6月25日 第一刷発行
もう、梅の花が咲いているらしい。
清(すが)しくもふわりと甘い薫(かお)りが、どこからかそよそよと匂っています。
足を止めて庭を眺めれば、濃い色の松葉の合間から、真っ白い花弁が見て取れた。
ほとんど時を同じくして、琴の音がやわらかに響き始めました。
足音を忍ばせて透廊(すきろう)を渡り切れば、几帳(きちょう)の向こうに座っている、弾き手の後ろ姿が目に入った。
「良い曲だね」
曲の余韻(よいん)が消えるのを見計らって声をかければ、驚いたように振り返った。
「まあ、お父さま」
彼女は、明るい色の髪と瞳を持つ、東家(とうけ)の二の姫です。
音楽の才に長(た)け、また愛くるしい面(おも)ざしを持った才媛であった。
「もうねえ、お前はとてもこの父の子とは思えないよねえ」
「才能にあふれていて、しかも、とびっきりのべっぴんさんだ。お母さまに似て良かったよねえ」
あら、といたずらっぽく笑い、二の姫は袖で口を覆(おお)いました。
「そんな哀しいこと仰(おっしゃ)らないで下さいな。私はお父さま似だと、もっぱらの噂(うわさ)ですのに」
「おやまあ、どこがなのだろうね」
「『おっとりし過ぎていて、はらはらして見ていられない』のだそうで」
違いない、とひとしきり笑っているうちに、階(きざはし)の方が騒がしくなりました。
蓬(よもぎ)を摘みに出ていた女房達が帰って来たらしかった。
ただでさえ、中央で高官を務める東家当主が帰って来るのは珍しいことです。
とりわけ、どんな行事もないこの時節の当主の帰還は、まったくの不意打ちであった。
女房達は泡をくったようにもてなしの準備を始めます。
「泡をくう」
「驚き慌てる」って意味ですよね。
なぜ「泡」なんでしょう・・。
「雑学ネタ帳」さん「『慌てる』の語源・由来 2020/6/27 」
「『慌てる(あわてる)』とは、『思いがけない物事に出会って、普段の落ち着きを失う。驚きうろたえる。物事を急いで行う』などの意味」
「あわてる」は古くは「あわつ」であり、「あわつ」は現代と同じで『あわてる。うろたえる』という意味です。
では「あわ」とは何を意味しているのか。
「あわてる」の語源は「泡立つ」であるという説があります。
「『泡立つ』とは文字通り『泡が立つこと』を意味する」
人が溺(おぼ)れると、手足をバタバタして水面に泡が立ちます。
「そこから『あわてうろたえること』を『あわたつ』と言い、これが略されて『あわつ』になったとされる」
「『泡を食う』は『あわつ』から生まれた言葉で『あわつ』や『あわてる』の『あわ』も語源は同じ『泡』」
「なお『食う』は『肘鉄(ひじてつ)を食う』や『締め出しを食う』などの『食う』と同じで『身に受ける。出くわす』という意味である」
まさかそのまま「泡」だったとは。
溺れそうな人を見てあわてているように見えたんでしょうか。
それとも溺れた人を見てよほどあわててしまったのか。
てことは「あわわわわ」も「泡わわわ」てこと?