こんにちは。きのひです。
「雨柳堂夢咄(うりゅうどうゆめばなし) 其ノ四」 波津彬子 著 を読みました。
2007年10月1日 新版第1刷発行
薬問屋の道楽息子である松太郎は商売を覚える事に身も入れずふらふらしていました。
最近は骨董(こっとう)集めに凝(こ)り出した。
ついに「そのガラクタ持って出て行けっ」と勘当(かんどう)されてしまった。
未練が残らないように川まで捨てに来た松太郎に声をかけたのは骨董屋の連(れん)でした。
「きれいな壺(つぼ)なのにどうして捨ててしまうんですか?」
「いいんです。どうせみんな偽物(にせもの)なんです」
松太郎は良くない相手にひっかかって偽物を高値で買わされた。
そのために店のお金に手を出してしまいました。
「偽物ですか。でもよくできていますし保存状態もいい」
「お売りになればいいんじゃないですか」
その品々は連の知り合いであるご隠居(いんきょ)様が全部ひきとってくれました。
しかし松太郎はすっきりしません。
「私は私を騙(だま)した人間と同じ事をしたんじゃないか」
「明日必ずこのお金を返しに行こう」
ご隠居の家を探しながら歩いているととてもいい薫(かお)りがしてきた。
「なんだろう」とキョロキョロする松太郎。
すると「もし、そこの御方(おかた)」
「昨日(さくじつ)は命をお救いいただきまして誠(まこと)にありがとうございました」
声をかけてきたのはきれいな少年だった。
美しくて清楚(せいそ)でどこか凛(りん)とした感じ。
「わたくしはこれから雨柳堂へ礼に参らねばなりません」
「お引きとめして申しわけございませんでした」
その少年のことが頭から離れない松太郎は雨柳堂の連を捜しあてます。
「私は確かに彼に会ったんです。彼の事を教えて下さい」
松太郎が捨てようとしていた壺や鉢や茶碗は擬(まが)い物だったが、菊の香炉(こうろ)だけは違った。
その香炉は、ある大名家にあったものでした。
「お客さま、物の『霊性』というのをお信じになりますか?」
「菊の香炉ですから菊慈童(きくじどう)にちなんで少年の姿をとったのか・・・」
菊慈童。
菊の妖精のような印象を受けます。
銕仙会(てっせんかい)「能と狂言」さん「能楽辞典」「曲目解説」に「菊慈童」がありました。
ストーリーと舞台の流れが載っています。
「中国 周の時代。
誤って王の枕を跨いだ王の寵童・慈童は、酈縣山(れっけんざん)〈現在の中国 河南省にあるとされる架空の山〉へ配流となる。
彼が流刑地へ続く唯一の橋を渡り終えるや、非常にも橋を切り落とした警護の官人。
慈童は王の形見の枕を抱きつつ、ひとり山中に取り残されるのだった。
それから七百年が経った魏の時代。
酈縣山麓から霊水が湧き出たとの報せに、勅使が現地へ派遣される。
すると山中には一軒の庵があり、中には一人の童子がいた。
彼こそ、かの慈童のなれの果て。
実は彼は形見の枕に添えられた妙文を菊の葉に書きつけ、そこから滴る雫を飲んだことで不老不死の身となっていたのだ。
慈童は不老長寿の薬の酒を讃えつつ上機嫌で舞い戯れ、妙文を勅使に捧げて帝の安寧を言祝ぐのだった」
「菊慈童にちなんで」とかさらっと出てくるのがさすがですね。
hibiyakadan.com さんによれば菊の花言葉は「信頼」「高貴」「高潔」「高尚」でした。