こんにちは。きのひです。
「『ネコひねり問題』を超一流の科学者たちが全力で考えてみた」 グレゴリー・J・グバー 著 水谷淳 訳 を読みました。
2022年5月31日 第1刷発行
「『ネコの空中立ち直り反射』という驚くべき謎に迫る」
「猫は秘密を隠し持っている」
猫は高いところから落ちると、最初にどんな姿勢であっても必ず足から着地するという驚きの能力を持っています。
1840年頃にスコットランドで生まれたウィリアム・ゴードン・ステーブルズは「猫―その特徴と性格、猫のおもしろい生き方、猫の病気」というガイドブックを出版した。
「猫が高いところから落ちたとき、最初は背中が下になっていて、身体が半円形に丸まっている」
「生まれ持った本能によって、数十センチメートル落下したところで突然、背中の筋肉を伸ばして脚を広げる」
そうすると腹が外側に、背中が内側にしなって重心が移動し、身体が回転します。
「そうなったらその姿勢を保つだけで、足から着地できる」
これはもっともらしい説明で、十九世紀当時、興味を持っていたほとんどの人も納得したらしい。
そんな状況が変わりはじめたのは十九世紀半ば、化学と光学が融合して写真術という科学技術が誕生したときです。
写真術は高速写真術へと進歩していった。
猫の落下を側面からとらえた連続写真は活発な議論を巻き起こすこととなりました。
身体を支える支点がないのに猫はどうやって宙返りできるのか。
フランス科学アカデミーのある会員は「もっとも基礎的な力学の原理と真っ向から相反する科学的なパラドックスが生まれたと言い切った」
運動量保存則があります。
1.外力が加わらない限り、物体は静止しつづけるか、または一定の運動を続ける(慣性の法則)
2.物体にかかる外力の和は、その物体の質量と加速度との積に等しい(力=質量×加速度)
3.第一の物体が第二の物体に力をおよぼすと、第二の物体はそれと大きさが等しい逆方向の力を第一の物体におよぼす。どんな作用に対しても、大きさが等しい逆方向の反作用が存在する。
「いっさい回転していない状態で落下しはじめた猫が宙返りするなんて、角運動量保存則に反するのだからありえないはずだ」
十九世紀末の物理学者は「猫が自力で宙返りすることはありえない」といいます。
「落下しはじめた瞬間に、それまで乗っていた棚や抱えられていた手など、近くにある固定された物体を押すことで、宙返りするための角運動量を獲得しているはずだというのだ」
撮影された落下する猫の連続写真を見ると、この仮説が間違っていることがはっきりと分かります。
「足を上にして落下しはじめた猫は、自ら身体をひねって四本すべての肢で着地する」
もちろん誰でも知っていることです。
一般人はそれを知っているだけで満足してしまい、もっと深い説明を知りたいとは思わない。
しかし科学アカデミーの面々は興味深い疑問を持ちます。
「落下した猫が必ず足から着地するのはなぜか?」
研究者たちが注目したのは加速度を感じとる「前庭(ぜんてい)系」でした。
前庭系はさらに、回転運動としての加速を感知する「半規管」と、直線的な加速を感知する「耳石器」という二つの部分に分けられる。
実験によって、猫は目隠しをされていても宙返りして正しく着地できるし、前庭系を損傷した猫も目隠しされていなければやはり正しく着地できることが分かりました。
一方、前庭系を損傷した猫が目隠しをされると、宙返りのための行動をいっさい取ろうとしない。
「これらの観察結果から、立ち直り反応では目と前庭系のどちらかの感覚を使って、着地するための正しい姿勢を判断することが分かった」
立ち直り反射についてはニワトリやウサギや子犬も示すかどうか調べました。
犬とニワトリは示さなかった。
「驚くことにウサギは宙返りができ、写真によるとその方法は猫と驚くほど似ていた」
著者から読者へお願いがあります。
1.うまく宙返りできない猫もいるかもしれない
2.猫にとっては嫌かもしれない
3.落とされた猫がトラウマを抱えてしまうかもしれない
「どうか猫を高いところから落とさないでほしい!」