不完全な脳

こんにちは。きのひです。

 

「悪の脳科学」 中野信子 著 を読みました。

2019年11月20日 第1刷発行

 

 

 

 

 


著者は脳科学者、医学博士、認知科学者。

「人間は誰でも驚くほど簡単に騙すことができる」

 

 

 

 

 

 


「笑ウせぇるすまん」に登場する喪黒福造の誘惑の手口が本書のテーマです。

この作品の作者は藤子不二雄Ⓐ先生。

 

 

 

 

 

 

 


ドラえもん」「オバケのQ太郎」「怪物くん」など1960年代以降の漫画界で圧倒的な人気を誇る作品を次々と生み出した藤子不二雄

それはふたりの漫画家のコンビ名としてのペンネームでした。

 

1987年にコンビを解消すると藤本弘氏が藤子・F・不二雄を名乗り、安孫子(あびこ)素雄氏が藤子不二雄Ⓐとして活動を続けた。

 

 

 

 

 

 

 


「ドイツの文豪・ゲーテがその生涯を捧(ささ)げたと言われる戯曲『ファウスト』に登場する誘惑の悪魔・メフィストフェレス

「彼と比べても、喪黒福造は見劣りしない」

 

メフィストフェレスの誘いに乗ったファウスト博士は最後、悪魔に魂を奪われるところをかつての恋人・グレートヒェンの祈りによって救済されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし「喪黒福造によって破滅させられるターゲットたちにはそんなカタルシスすらも用意されてはいない」

 

喪黒に出会うまで、少なくとも表面的には平穏無事な生活を送っていた市井の人々は、凶悪犯罪を犯したり廃人になったりといった結末を迎えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者は2019年に改めて「笑ウせぇるすまん」の原作単行本を読み返してみます。

そして「強い衝撃を受けた」

 

 

 

 

 

 

 

 


著者がはじめて作品に接してから30年「現在の私は脳科学・心理学を学んできている」

 

その視点で作品を読み返してみてあらためて気づきました。


「先生の漫画には真理が描かれている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


アカデミックの世界には不文律があります。

 

「『こうすれば人は簡単に騙される』といった詐欺師の教科書になりかねない論文・著作を学者は書くべきではない」という半ば無意識的な自主規制。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤子不二雄Ⓐ先生はいうなれば脳科学・心理学を先取りするようにしてストーリーを構築できている。

「笑ウせぇるすまん」という作品のなかで軽々と「人間の誘惑の仕方」を描き出しています。

 

 

 

 

 

 

 

 


喪黒福造の名刺にはこう記されている。

 

「 ココロのスキマ・・・ お埋めします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「心という機能を生み出す脳を消化器(胃や腸)などの他の臓器、あるいは骨格筋や心筋など人体を構成する他のパーツと比較すると、不思議なほど完成されているとはいい難いものなのだ」

 

消化器や循環器が不完全であったら、生命を維持することはできません。

 

 

 

 

 

 

 

 


「しかし、脳は違う」

 

脳は環境やインプットされる情報によって大きく変化します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえば、まったく文化の異なる外国に移住してもその異なった環境に適応して脳が生存戦略を変更することが可能である。

 

また昨日まで雇われる立場だった人が経営者になったときなども、脳が環境の変化に対応して生存戦略の変更をすみやかにすることができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし脳も他の臓器と同じように可塑性が小さく環境による変化が起こりにくいものなのであれば、いま述べたような環境の変化は人間の生死に直結する問題となりかねない。

 

つまり「人間が生きていくための戦略変更を柔軟におこなうために脳だけは他の臓器と違ってつねに未完成である必要があるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういった生存戦略の変更など脳が不完全であるからこそ生じる大切な機能は、たとえば現状に対して「これで大丈夫だろうか?」と不安を感じ検証をおこなうという形でも現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「脳が不完全」だったとは・・

 

これをきいて脳が「完全か不完全か」という発想すら自分の中になかったことに気がつきました・・・