矜持とプライドと矜恃

こんにちは。きのひです。

 

「燦(さん) 1 風の刃(やいば)」 あさの あつこ 著 を読みました。

2011年4月10日 第1刷

2021年10月15日 第9刷

 

 

 

 

 

 

江戸から遠く離れた田鶴藩。

燦が住んでいる萱葺(かやぶ)き屋根の屋舎は山深いところにありました。

 

 

 

 

 


木々の間をすり抜けて岨道(そばみち)さえついていない山の斜面を駆け下りる。

雑木と山笹の間を何に躓(つまず)くこともぶつかることもなく走る。

 

 

 

 

 

 

崖の上に出ました。

切りたった崖の底に沢が流れています。

 

水音はここまで届かない。

 

 

 

 

 

 

 

薄闇の中によくよく目を凝らせば崖に幅五寸ほどの道を見ることができます。

谷底に向かって急斜なまま伸びていた、鹿でさえ躊躇うほどの傾斜。

 

 

 

 

 

 


燦は躊躇わず一息に崖を下ります。

道は途中で消えてかわりに赤茶けた大岩が点々と覗いていた。

 

 

 

 

 

 

岩から岩へと飛び移りながら下りて行きます。

足を滑らせればまっさかさまに谷底に落ちる。

 

 

 

 

 

 

崖を下り切らず一際(ひときわ)大きな石の上に立つと、そこからまた細い道が続きます。

道はすぐに雑木の疎林に入り込み、抜けて灌木(かんぼく)の茂みの手前で途切れた。

 

 

 

 

 


灌木の向こうに萱葺き屋根の屋舎が建っています。

 

一条の煙が見えた。

ゆるゆると上がり、屋根を越したあたりで棚引(たなび)いて消えていく。

 

 

 

 

 


燦は幼いときから鳥獣を馴らすことに長(た)けていました。

臆病な雀が燦の広げた手のひらに躊躇いもせず乗ってくる。

 

 

 

 

 


山犬や熊、猪の類さえ手なずけることができました。

手負い、子ども連れ、抱卵・・・特別な場合でない限り、鳥も獣も燦の仲間であり友であり下僕だった。

 

 

 

 

 


暮れようとする空にゆらゆらと舞う鳥影が見えました。

「あの飛び方は・・」鷂(はいたか)だ。

 

 

 

 

 


指を唇に当て、高く音を出します。

心の内で鷂を呼ぶ。

 

 

 

 

 


「来い。ここに来い」

燦は立ち上がり、懐から手甲(てっこう)を取り出します。

 

 

 

 

 


「鷹よ」語りかける。

「おれは戯れや気まぐれでおまえに腕を差し出したりしない」

 

 

 


「誓う。おまえの誇りとおれの矜持(きょうじ)にかけて、誓う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「矜持」イメージはつきますが、ちゃんと説明はできないかも。

 

「 Domani 」さん2023.10.12 「『矜持』とは?意味から類義語との使い分けまで例文付きで解説!」によると。

 

 

 

 

 

 

 


矜持は「確固たる信念のもと、自らに誇りを持つこと」や「誇りと自尊心によって自分の行動を抑制すること」を意味する言葉です。

 

矜持が象徴する自信や誇りは他者との比較の上に成り立つ相対的なものではない。

 

 

 

 

 

 

 


「周囲がどうであろうとも自分は自分を認めるという、絶対的なスタンスを表わすものです」

 

たとえ周囲に自分よりも優れていると感じる人物がいたとしても自分を卑下したり引け目を感じたりすることなく、自分自身を誇る気持ちが「矜持」

 

 

 

 

 

 

 

 

矜持の「矜」は訓読みで「ほこ(る)」とも読みます。

 

この「ほこる」はすなわち「誇る」で矜持の意味に含まれる「誇り」を表わしている。

 

 

 

 

 

 

 


矜持の「持」は、「保有すること」「保つこと」を意味する言葉です。

 

「矜」と「持」のそれぞれの意味が組み合わさることで矜持は「誇りを持つこと」を表わす熟語となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「プライド( pride )」を日本語に訳すと「誇り」や「自尊心」になります。

矜持もまた誇りや自尊心にまつわる熟語であることから同じ意味として理解されがち。

 

 

 

 

 

 

 


「しかし『プライド』と『矜持』とでは、ニュアンスに大きな違いがあります」

 

「矜持」は周囲の評価がどうあれ揺らぐことのない絶対的な自信

 

それに対し「プライド」が意味するのは「他者に自分を認めさせたい」という気持ちを前提とする相対的な自信。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『プライド』がしばしば『高慢』や『うぬぼれ』と訳されることを見ても『矜持』とのニュアンスの違いは明確といえます」

 

 

 

 

 

 

 

 

矜持と特に違いが分かりにくい言葉として読みが同じでかつ漢字の見た目も似ている「矜恃」があります。

 

このふたつの違いは「持」と「恃」の「へん」のみ。

 

 

 

 

 

 

 


しかしこのわずかな違いがそれぞれの言葉のニュアンスに大きな違いを生んでいます。

 

 

 

 

 

 


矜恃の「恃」は「たのむ」「頼りにする」などの意味がある漢字。

 

つまり矜恃には「自分自身を頼りにする」「自信を持って堂々と振る舞う」というニュアンスが含まれます。

 

 

 

 

 

 


矜持は「自分を抑制する」「コントロールする」というニュアンスが含まれる言葉。

「自信を意味する点では同じですが結果としての振る舞いは異なります」

 

 

 

 

 

 

 

 

たしかにパッと見、似てますね。

もしかしたら今まで、せっかく使い分けされていても見過ごしてしまっていたかも。

 


気をつけないと。