こんにちは。きのひです。
「春疾風(はるはやて)」 藤原 緋沙子 著 を読みました。
2006年3月15日 第1刷発行
2011年4月15日 第7刷発行
厚田(あつた)淳一郎は三年前、播磨国小原藩寺社奉行配下の同心でした。
そのころ藩の財政は窮乏していた。
赤字をどうやって埋めていくか・・
良い案も浮かばず万策尽きたかと思われた時、執政田村右京が江戸表での経費節約を藩主の勝永に願い出ました。
入ってくる額が増えないのなら出費を減らすしかない。
その出費も江戸の御殿の暮らしをまず節約してほしいと・・誰も言い出せなかった事を進言しました。
勝永は激怒した。
即刻田村は蟄居(ちっきょ)淳一郎たちを束ねていた寺社奉行の永田半蔵も田村一派だったために役を解かれて禄の半分を召し上げられ、おまけに辺境の地に家族ともども追いやられました。
寺社方の与力同心も例外ではなく総勢十名が藩を首になり放逐された。
淳一郎もその中の一人でした。
この時召し上げた禄の額は二千両近く。
藩は藩士を処分することによって財政の危機を逃れました。
淳一郎は母を縁戚に預けて江戸にきた。
でも今時士官の口などどこにもありませんでした。
母への仕送りもあり淳一郎は筆作りで暮らしをたてるようになった。
昔の書の師匠が筆のなりたちから教えるような人だったのでそれが役に立ちました。
十日ほど前、婚礼のための筆をつくる注文が入った。
筆には絵師などが使う絵筆と書家が使う書筆とがあります。
「絵筆と書筆は材料も工法も同じではなく、高級品としての材料を揃えるのもたいへんな手間がかかる」
絵用の筆と習字用の筆はちがうんですね。
思いつきもしませんでした。
清晨堂(せいしんどう)さんの記事に「書筆と画筆の違い」について書かれていた。
「軸(竹、木、プラ等)に獣毛の穂首をすげるという点では同じです」
2つ大きく異なる事がある。
1つ目は画筆は穂首全体を水に浸けて使用するのに対し書筆の中には穂先だけを下ろす筆が一定数あるという事。
2つ目は種類の多さが違うという事です。
書筆は大筆、中筆、小筆という大分類で分けられることが多い。
画筆、特に日本画筆の場合は非常に細かく細分化されています。
面を塗るための刷毛、連筆、平筆
骨書き等のための線描筆
運筆のための付立筆、点描のための点描筆
彩色筆、ぼかし用の隈取筆・・・
「これは作品から逆算すると少しイメージが湧くかもしれません」
「書道の作品を1枚仕上げるのに筆を5本も10本も持ち替えるということはまずありえないと思います」
しかし日本画1枚を仕上げるのには様々な場面毎に筆を持ち替えて制作していく。
「書道筆だけで日本画を完成させるのは難しいと思われます」
書道専門店 大阪教材社さんの記事にも「書道筆と画筆の違い」がありました。
「画筆は線よりも面を描くことが多く、色を塗ったりするのでそれを描くのに適したつくりをしています」
画筆には平筆が多く油絵用の筆は油絵具が重いので超剛毛の豚毛が多い。
「面相筆など繊細な線を描くためにつくられた絵筆は書道の筆としても充分お使いいただけます」
そんなにきっぱり違うんですね。
清晨堂さんの商品案内には九種類以上の筆の分類の中にまだそれぞれ種類があります。
またそのなかに穂丈穂幅の大きさが違うものがありそれとは別に水彩・アクリル向けがあり、絵手紙向け、油絵向け、書道向け・・
やはりプロの人は筆の違いを一目で見分けておられるんでしょうか。