こんにちは。きのひです。
2022年10月15日 初版第1刷発行
「きゃあ!ひ・・人殺しい!」と女の叫び声。
船着き場に停泊している屋形船の船室で娘が仰向けに倒れ、口からは血が流れていました。
娘は昼間、中村座の芝居を男と見に来ていた。
木戸番をしていた金次が覚えていました。
「せっかくの良い芝居の帰りにこんな目に遭わされちゃ娘さんは浮かばれめえ」
金次は雷蔵(らいぞう)親分のところへもぐりこんだ。
雷蔵親分は悪所とされる三笠町界隈を仕切っており賭場や女郎屋などを営んでいる大親分。
もし少しでも疑いをかけられたら闇から闇へ葬られることになります。
金次は自分のことをこういいました。
「親父も渡世人気取りでガキの頃から連れられて賭場に出入りしてやしたろくでなしです」
すると横で聞いていた番頭格の才六(さいろく)がいきなりこう言いました。
「ろくでなし・・って、なんでそう言うんですかね、親分」
「いえ、あっしの名が才六なもんで六と関わりがあるのかなあって」
でも「知るか、ばか」「どうでもいい話をするな」と親分に小馬鹿にされてしまった。
そこで代わりに調べてみました。
語源由来辞典さんによると「ろくでなしとは『なんの役にも立たない者』」
「碌でなし」と書くのは当て字で本来は「陸でなし」
「陸」は平らなことを表す言葉です。
現代でも平らな屋根を「陸屋根(ろくやね)」
水平の基準となる墨の線を「陸墨(ろくずみ)」と言う。
その「陸」を否定した「陸でなし(ろくでなし)」は性格が曲がった人を意味します。
そこから転じて役に立たない人を「ろくでなし」と呼ぶようになった。
つまり「ろくでなし」の語源は「六」とは無関係でした。
これはぜひ才六さんに伝えてあげたかった。